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大阪高等裁判所 昭和52年(ネ)1854号 判決 1980年8月26日

控訴人(附帯被控訴人) 社会福祉法人Y福祉センター

右代表者理事 A

右訴訟代理人弁護士 門間進

同 清水伸郎

右訴訟復代理人弁護士 角源三

被控訴人(附帯控訴人) 乙川X1

<他3名>

右被控訴人(附帯控訴人) 四名訴訟代理人弁護士 古川靖

主文

本件控訴ならびに本件附帯控訴はいずれもこれを棄却する。

控訴費用は控訴人の、附帯控訴費用は附帯控訴人ら(被控訴人ら)の負担とする。

事実

一  控訴代理人は、「原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。被控訴人らの控訴人に対する各請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とする」との判決を求め、被控訴人ら(附帯控訴人ら以下被控訴人らという)代理人は、控訴棄却の判決を求め、附帯控訴として、「原判決中被控訴人ら敗訴の部分を取り消す。附帯被控訴人(控訴人以下控訴人という)は被控訴人乙川X1同乙川X2に対し、各五五〇万円、被控訴人丙谷X3、同丙谷X4に対し、各五六七万円、および右各金員に対する昭和四九年九月一八日から支払いずみまで年五分の割合による金員を支払え。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする」との判決ならびに仮執行宣言を求め、附帯被控訴代理人は附帯控訴棄却の判決を求めた。

《以下事実省略》

理由

一  被控訴人乙川X1および同乙川X2が昭和四三年七月に精神薄弱児である長女B(昭和○年○月○日生)を控訴人の経営する精神薄弱児収容施設Y学園に入園させたこと、被控訴人丙谷X3および同丙谷X4が昭和四五年四月に精神薄弱児である次男C(昭和○年○月○日生)を同学園に入園させたことは、当事者間に争いがない。

二  被控訴人らは、控訴人との契約によりB、CをY学園に入園させ、その監護、育成を控訴人に委託した旨主張し、控訴人はこれを争うので、被控訴人らと控訴人との間に右委託契約が成立したか否かにつき判断する。

《証拠省略》を綜合すると、

控訴人は、厚生大臣の認可を得て設立された社会福祉法人であり、その経営するY学園は児童福祉施設に属する精神薄弱児施設であること、被控訴人乙川ら、同丙谷らはそれぞれ直接または社会福祉事務所を通じて兵庫県○○児童相談所へ申請又は相談をし、同所でB、Cが重度の精神薄弱児で施設収容が最も適当であるとの判定を受けたこと、その結果、B、Cは、兵庫県知事の委任を受けた同児童相談所長の入所措置により(Cの場合は入所可能施設が三箇所あったため、被控訴人丙谷らに選択させ)、Y学園に入所したこと、右入所後Y学園はB、Cにつき現実の監護、育成をして来たが、親である被控訴人らに対し直接にB、C等児童の日日の生活状況を記録したパンフレットを送り、入所児童の指導あるいは身の廻り品等の送付について要望をし、被控訴人ら親も寝具その他身の廻り品を学園からの連絡で用意持参し、監護養育についても直接に希望等を述べていたこと、また被控訴人らはそれぞれ、福祉事務所の査定によって定められたB、Cの入所費の一部を児童相談所の通知により県に送付していたこと、が認められ、右認定を左右し得る証拠はない。

右認定事実によると、B、Cは児童福祉法第二七条一項三号による兵庫県知事の措置により入所したものであり、右措置により、右知事とY学園との間には右児童についての委託関係が成立し、右児童らの各親権者と右措置を受けた右施設との間には直接委託関係は発生していないものと解されないでもない。

しかしながら、児童福祉法は、児童の保護者に児童の監護教育について第一次的な責任を負わせ、国、公共団体には右責任遂行のために積極的に援助し、場合によってはこれに代るという第二次的な責任を負わせる建前をとっており、精神薄弱児の施設入所についても、知事は精神薄弱児の親権者の意思に反して右児童を施設に入所させる措置をとることができないのであって(法第二七条四項)、したがって、一旦入所措置をとった場合でも親権者において反対意思を表明した場合には右入所措置を解除して児童を退所させざるを得ないのであり、右趣旨からみれば、知事の右措置は実質的には精神薄弱児の親権者の施設委託の意思表示に基づいているというべきであり、右申込に対して施設がこれに承諾することにより(知事の入所措置に対し、施設の長は正当の事由がなければこれを拒むことができない―法第四六条の二―のであって、これは私法的には児童の福祉のために契約の締結を強制しているといえる)、児童の親権者と施設との間に委託契約関係が発生するのであり、知事の右措置は、児童福祉のために行政として右委託契約に積極的に介入しこれをあっせんするものであると解するのが相当である。B、Cの親権者である被控訴人らが前判示のとおり実質的に入所措置費の一部を負担し、施設自体も被控訴人らに対し直接に、右児童について連絡調整をしていることも(後者については好意的な一面はあるとしても)、右のような私的委託関係の一顕現であるということができる。もっとも措置費用については国又は地方公共団体が第一次的に支弁し、また知事は施設の意思如何に拘らず措置変更をすることができることとされているけれども、これらも精神薄弱児の福祉のため行政が積極的に介入援助をしているものということができ、前記薄弱児の親権者と施設との間に委託関係が成立していることを認めるについての妨げとはならない。

したがって、Bの親権者たる被控訴人乙川ら及びCの親権者たる被控訴人丙谷らと控訴人との間には、知事の措置を介し私法上の委託契約関係が成立しているものと解するのが相当である。そして、右契約関係は、B、Cら精神薄弱児を入所させ監護教育すべきことを内容とする準委任契約であり、したがって控訴人は受任者として善良なる管理者の注意義務をもってその債務を履行すべく、もとよりB、Cの生命、身体に対する危険の予防のために必要な監護をなすべき義務があるというべきである。

三  Bが昭和四九年三月一七日Y学園内の浄化槽内で、Cも同月一九日同浄化槽内で、それぞれ死亡したことは各当事者間に争いがない。

そこで、右各死亡について、その死亡の原因及びその死亡につき控訴人に前判示準委任契約に基づく債務不履行の責任があるか否かについて判断する。

前記争いのない事実に《証拠省略》を綜合すると、次の事実が認められ、他に右認定を左右し得る証拠はない。

1  Y学園は△△の西側山麓にある控訴人Y福祉センター内の一施設である。同学園は、別紙見取図記載のとおり、中央部に運動場があり、その囲りにa寮棟、管理棟、サービス棟、学習棟、b寮棟、新学習棟の各建物が分棟式に建てられ、敷地の外周は金網フェンスが設けられ、外部への出入りは正門が利用され、また指導員等については学習棟とサービス棟との間にある通用扉(フェンスでつながり、中央に施錠があるが、手動で自由に開閉できる)も利用されている。

b寮は、中央部に玄関、デイルームがあり、その南東側に女子児童宿舎(六室)と南西側に男子児童宿舎(九室)が鳥の羽を拡げた形で設けられ、各宿舎中央廊下の南側が居室北側が倉庫、物置、便所、洗面所と続いている。デイルームの北側に出入り口が二箇所あり、西の方は閉められ、東側の出入口は利用されているが、午後六時過ぎ、用務員の所持する鍵で閉められている。右寮には玄関の他、宿舎の両端に各職員の所持するマスターキーで開閉できる非常口が設けられている。右b寮便所真裏北側空地(外周フェンスから一・三〇ないし一・五二米)に本件コンクリート浄化槽(南北二・四六米、東西三・二二米、深さ二・五六米)が設けられ、その南西隅と北東隅にマンホールがあり丸型の鉄蓋(前者が本件マンホールであり蓋の直径は四八糎その重さは一七・五キログラムである)で閉められている。右浄化槽の東側には洗濯物干場、布団干場、倉庫、用務員宿舎がある。

2  昭和四九年三月当時Y学園には重度五〇名、中軽度三四名合計八四名の精神薄弱児が重度たるa寮に三二名、中軽度たるb寮に五二名と分かれて在籍し、b寮ではそのうち三名が長期園外実習をし、二名が他に入院していた。b寮では指導員三名、保母七名、a寮では指導員、保母合せて一二名がそれぞれ右児童の生活指導、訓練等にあたっていた。B、Cはともに重度であったが、Bはb寮四号室「c」に、Cは同寮一一号室「d」に在寮し、Bの部屋は定員三名であったが内一名は入院中、他の一名は園外実習中のためB一人が在室し、Cの室は四名在室していた。

3  三月一七日、b寮では更に三名が帰宅していたため四五名が在寮していた。当日は日曜であったため、同寮では日勤(午前九時から午後四時三〇分まで勤務)職員が一名、早出(午前七時三〇分から午後三時三〇分まで勤務)職員が一名、宿直(午前九時から翌日午前九時まで二四時間勤務)職員が二名それぞれ勤務していた。同日午後三時のおやつの時間のあと、宿直員の一人は園児三名位を連れてY学園のフェンス外に木の根を掘る作業に出た(当日の園の予定には右作業は定められていなかった)。早出職員は同日午後三時三〇分に、日勤職員は午後四時三〇分にそれぞれ学園から帰宅したが、その時には未だ前記宿直員の一人と園児三名くらいはまだ同学園のフェンス外にいた。同学園では日曜平日とも午後三時から一五分くらいおやつ、午後五時から一時間くらい夕食、午後八時(中学生以上の児童は午後九時)に就寝、その間は自由時間(但し週三回は入浴)である。したがって、当日もおやつの後午後五時まで四五名の園児が思い思いに自由に遊んでいた(また寒いため、デイルームか年上の子は自室で)のを一人の職員で指導保護しなければならない状態であった。同日午後五時の夕食の準備および世話は宿直者二名ですることになっていたが、右夕食時になって、同日の午後三時半ころにはその在寮が確認されていたBが同寮にいないことが判った。そこで宿直者は同日午後六時には園長にも連絡し、間もなく招集された職員らは、午後八時には警察署にも連絡し、学園の内外を夜中まで捜索し、その際本件浄化槽をも調べたが、マンホールの蓋が開いているなどの異常は見受けられなかった。学園は、翌一八日および一九日も職員全員のほか機動隊員も加わって近隣の各所を捜索したが何の手掛りもなかったため、一九日午後五時頃には職員を一応自宅待機させるため数名の職員を残して他を帰宅させた。ところが、午後七時半頃、デイルームで遊んでいたDが同日八時の就寝時間になって在寮しないことが判り、再度職員を招集して隅々まで綿密な捜索をし、同日午後九時二〇分頃本件浄化槽の蓋をも開けて中を調べたところ、その中からBが死体で発見され、続いて同日午後一一時頃にはCも同じく同所で死体で発見された。B、Cともに肺内に汚水を吸飲し、死因は溺死と考えられる。

4  本件浄化槽は学園において委託している業者が定期的に汲取り清掃などの管理をしていたが、その他に学園の用務員が交替で新学習棟の汲取式便所の汚物を右浄化槽に投入していた。三月一七日当日も午後一時から午後二時までの間右用務員が右浄化槽マンホールの蓋を開けて右作業をしたが、右用務員は作業後右蓋をした。

5  B、Cとも重症児であり、Bは移動運動能力五才、知的発達能力三才位で、会話をすることができず、受身で見知らぬ人に近づいたことはなかった。Cは移動運動能力三才六ヶ月、知的発達能力二才六ヶ月位で、言葉も一才三ヶ月位、怖がりで暗いところや狭いところを嫌い、また見知らぬ人に近づかなかった反面、正義感が強く、誰かが悪いことをすると、その者を指差して怒ってほしいという表情をすることが多かった。

6  なおBの場合にもCの場合にも本件事故当時外部の者が学園施設内に侵入したような形跡はない。

以上認定の事実によれば、B及びCの死亡の原因は、たまたま浄化槽の蓋が開いていたため附近で遊んでいたBらが誤って落ちたということも考えられないではないが(もっともその場合そのあとでその蓋を閉めた者が現われてもよい筈であるが、これを閉めたという者は未だに現われない)、その可能性は少く(ことにCの場合その可能性は殆んど考えられない)むしろ同人らは何者かによって浄化槽内に投込まれた公算が大であり、しかも右犯行時外部の何者かが学園内に侵入していたような形跡も窺われないのであるから、右犯行は当時学園内にいた控訴人の部内者によって行われたとの疑いが強いといわねばならない。しかしながら後記(二)、(三)の場合が全くないとも断定できないので(Cの場合については神戸地方検察庁は控訴人の職員である保母のD(旧姓D1)がその犯人であると断じ同女を殺人罪で起訴したが、右刑事事件は現在神戸地方裁判所で審理中のため、当裁判所に提出されているのはその資料の一部に限られており、右資料だけでB及びCが控訴人の職員の手により殺害されたものと断定するのは相当でない)、以下(一)B及びCが控訴人の職員により殺害された場合、のほか(二)右殺害が外部の者によって行われた場合、及び(三)Bらが誤って浄化槽に落ちて死亡した場合、をも想定し(本件においてはそれ以外の場合は考えられない)、その各場合について控訴人に責任があるか否かを検討する。

前認定の事実によると、控訴人は本件準委任契約の履行にあたって、保母、指導員等の従業員を履行補助者として使用しているものであるから、(一)の場合即ち殺害が控訴人の従業員の犯行による場合には、控訴人は、履行補助者の右所為によって債務不履行に至ったものであり、控訴人の責に帰すべからざる事由によって不履行になったものとは認め難いから、その責任を免れることができないのは当然である。

次に、右以外の(二)の場合即ち外部の者の犯行による場合、控訴人が債務不履行の責任を負うべきか否かについて考える。

前判示の事実からすると、三月一七日控訴人は当時重度の精神薄弱児であるB一人を在室させており、しかも同女が殺害されたと推認できる時間には、b寮には職員が一名あるいは二名しか在寮しない状況であったのであるから、仮りに右人員が厚生省令の措置基準に達していたとしても、施設内でかかる犯行が行われているのに拘らず職員がこれに気付き得なかったこと自体控訴人の管理保護体制若しくはその時の職員の勤務の仕方に問題なしとせず、したがって前判示の状況にある精神薄弱児を管理保護するについて充分であったとは認め難い。したがって、この場合にも右債務不履行は控訴人の責に帰すべき事由に基づくものといわざるを得ない。

次にCが行方不明になった三月一九日午後七時半から八時までの間は、捜索を一先づ止めて、職員を一時待機させ、数人のみ残り、かつ右の時間にはb寮については施錠をした後であるから、外部の者が寮内に侵入して児童や学園関係者の誰にも気付かれずにCを連れ出す可能性は殆んど考えられないが、仮りに施錠の不十分などの理由により控訴人が外部の者の侵入を許しこれに気付かなかったとするならば、Bの場合と同様矢張り控訴人がこれら精神薄弱児の保護安全管理について充分であったとは認め難い。

次に(三)の場合であるが、仮りに浄化槽の蓋が開いていたためBらが誤って落ちたとすれば、前判示の能力しかない児童の場合蓋が開いていれば、そこから落ちる危険も考えられるのであるから、控訴人においては、浄化槽の廻りにフェンスを作る、あるいは蓋の上に重しを置くなどして(現在では、右のとおりに改められている)落下の危険を防止すべき安全管理義務があるところ、これをおこたったものというべきであるから、この場合にも控訴人には債務不履行上の責任があること明らかである。

してみると、本件においてはB、Cが浄化槽内で死亡するに至った原因が控訴人の職員によって殺害された場合はもとよりそうでない場合においても、控訴人の責に帰すべからざる事由によって発生したものとは認め難く、また控訴人に債務不履行の責任を負わせることが信義則上酷に失すると認められるものは見当らない。そうとすれば、前記債務不履行は控訴人の責に帰すべき事由に基づくものということができる。(被控訴人らは、B、Cの死因について(一)の場合のみを主張しているけれども、右死因は、B、Cが前判示のとおり死亡し、右死亡は、準委任契約の不履行にあたり、右不履行が控訴人の責に帰すべからざる事由によるか否かについての態様にとどまるといえるから、(二)ないし(三)の場合について判断をしても主張のない事項について判断したことにならない。)そして、その不履行とB、Cの死亡および右死亡と被控訴人らの後記損害との間に因果関係があることは明らかであるから、控訴人は受任者としてその債務不履行の結果生じた被控訴人らの後記損害を賠償すべき義務がある。

四  損害

1  慰藉料

《証拠省略》によると、Bの父母である被控訴人乙川X1、同X2は重度に精神薄弱児であるBに、またCの父母である被控訴人丙谷X3、同X4は同じく重度の精神薄弱児であるCにそれぞれ特に強い愛情を抱き、右子らの将来のためを思ってY学園を信頼してその監護、教育ならびに生命、身体の安全を全面的に託し、その成長に期待していたものであることが認められる。しかるにB、Cはその専門的施設であるY学園の浄化槽の汚物の中で溺死したものであり、そのために各両親が受けた精神的苦痛は大きいものと認められ、その他控訴人が本件の真相究明のための調査に非協力的であることなど本件にあらわれた一切の事情(なお本件の慰藉料の額を決めるについては被害者B及びCの死因が控訴人の職員によって殺害されたものである場合とそうでない場合とによってその額に差異が生ずるが、さきに述べたように本件では前者の場合であると断定することができない以上後者の場合を前提としてその額を定める外はない)に鑑み、同被控訴人らの右各精神的苦痛を慰藉するためには、被控訴人乙川両名につきそれぞれ金二五〇万円、同丙谷両名につきそれぞれ金二五〇万円をもって相当と認める。

2  葬儀費および墓碑建立費

《証拠省略》によると、同被控訴人らはCの葬儀費用として金三五万円を支出し、また墓碑建立費として金四七万円の支出を要することが認められる。一般に被害者の遺族が支出した葬儀費用および墓碑建立費は社会通念上相当とされる範囲において加害者に賠償させるべきものであるが、本件の場合においては、葬儀費用として請求にかかる金二〇万円は葬儀費用として社会通念上控訴人に賠償させるに相当な範囲のものと認められるが、墓碑建立費についてはそのうち金一〇万円をもって控訴人に賠償させるに相当な額と認める。

3  弁護士費用

右のとおり、被控訴人乙川両名はそれぞれ控訴人に対し各二五〇万円の、同丙谷両名はそれぞれ控訴人に対し各二六五万円の、本件各債務不履行に基づく損害賠償債権を有するところ、右債務不履行は不法行為にも比すべき場合にあたるものであるから、右請求をするに要した弁護士費用はその債務不履行と相当因果関係のある債権者の損害に該当するというべきである。そして、弁論の全趣旨によると、控訴人が任意に支払をしないので、被控訴人らは右債権の取立のため本件請求訴訟手続の追行を本件被控訴人ら訴訟代理人に委任したことが認められるが、本件の審理経過、事案の難易、前記認容額等に鑑みると、被控訴人乙川両名についてはそれぞれ金二五万円同丙谷両名についてはそれぞれ金二六万五〇〇〇円が本件各債務不履行と相当因果関係のある損害であると認める。

五  結論

以上のとおりであるから、被控訴人らの本訴請求は、控訴人に対し、被控訴人乙川X1、同乙川X2が各金二七五万円、被控訴人丙谷X3、同丙谷X4が各金二九一万五〇〇〇円、および右各金員に対する本件訴状が控訴人に送達された日の翌日であること記録上明らかな昭和四九年九月一八日から支払ずみまで、民法所定の年五分の割合による遅延損害金の各支払を求める限度において理由があるが、その余は失当である。

よって、被控訴人らの請求を右の限度で認容した原判決は正当であって、本件控訴ならびに附帯控訴はいずれも理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第九五条、第八九条、第九三条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 谷野英俊 裁判官 丹宗朝子 西田美昭)

<以下省略>

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